最高裁判所第三小法廷 昭和35年(オ)938号 判決 1961年11月07日
主文
本件上告を棄却する。
上告費用は上告人の負担とする。
理由
上告人の上告理由第一点について。
原判決は、原判示三、〇〇〇円えの賃料増額が昭和三一年七月地代家賃統制令の改正により、本件建物の賃料統制が撤廃された直後に応急的になされたものであり、かつ、昭和三一年七月以降も東京都内における不動産の時価が引き続き異常な上昇を続けてきたことを適法に認定した上で、被上告人の本訴賃料増額請求を是認したのであるから、原判決の判断は正当であり、右三、〇〇〇円えの増額から本訴増額請求までの期間は八ケ月に過ぎないとしても、原判決に借家法七条の解釈を誤つた違法があるということはできない。また、原判決が本件建物の建築後の年数を考慮に入れて判断していることは、判文上明らかであるから、原判決には所論の違法もない。その他の所論は独自の見解に基ずく主張に帰する。要するに、原判決には所論審理不尽、理由不備、法令の解釈を誤つた違法はいずれも認められない。論旨はすべて理由がない。
同第二点について。
所論は、本件賃料増額請求が無効であるとの前提にたつ主張であるが、その無効でないことは第一点について説示のとおりであるから、所論はその前提をかくもので、採用できない。また、上告人に履行遅滞の責任を認めた原判決の判断は正当であり、原判決には民法五四一条の解釈を誤つた違法はない。論旨は理由がない。
同第三点について。
原判決は、挙示の証拠により、所論事実を認定しているのであるから、原判決には所論の違法はない。論旨は理由がない。
よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 高橋 潔 裁判官 河村又介 裁判官 垂水克己 裁判官 石坂修一 裁判官 五鬼上堅磐)